イオンミリング装置とは、試料の断面加工に使用される装置です。
走査電子顕微鏡(SEM)用の試料を作成する際に用いられます。
原理としましては、アルゴンイオンビームを照射して試料の原子を弾き飛ばします。
そうすることで試料のごく表層を削っていきます。
通常の機械研磨後に使用することで、試料のダレや表面の細かいキズを除去し、
より鮮明な断面を得ることができます。
長時間ビームを照射することで、深く削ることもできますし、ビーム照射の角度を
変えることで、エッチングレート差を利用した凹凸を強調した加工を行い、
結晶粒界やめっきの多層膜を観察することができます。
イオンミリング装置を使用し、フクレの解析を行いました。
Fe入りCu材にCuストライク、Agめっきを行ったサンプルです。
イオンミリング加工前では、CuとCuの間でふくれていることがわかります。
CuとAgの境目は見えますが、素材のCuとCuストライクの境目は見えません。
イオンミリング加工後では、CuとAgの間に1層あるように見えます。
これがCuストライク層ではないかと考えました。
素材のCu自体がふくれているようです。
より詳細な解析を行うため、SEMで観察してみます。
イオンミリング加工を行ったところ、ふくれた部分のCuとAgの間に層があることがわかります。
しかし境目はあまりはっきりしません。
各層をEDX解析した結果、ふくれているCu層からFeが検出されたことから、
素材のCu材間でふくれていることがわかりました。
また、Cuストライク層かと思われた、ふくれたCuとAgの間の層からは
CuとAgが検出されたことから、耐熱によりできたCu-Ag合金層ということがわかりました。
Cuストライクは非常に薄いため、Agと合金化して境目がうやむやになったようです。
新たに導入したイオンミリング装置について紹介させていただきました。
断面での解析や、蛍光X線では測定できないめっきの膜厚測定などが、よりやりやすくなりました。
今後もこの装置を活用し、より良いめっきの生産・技術の向上に努めていきたいと思います。