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TECHNOLOGY INFORMATION
技術情報
2024.1.8
Agめっき
銀‐グラファイトめっきとは
銀‐グラファイトめっきは、銀めっき被膜の中にグラファイトを共析させためっきです。
純銀めっきと同等の電気伝導性ながら、はるかに高い耐摩耗性を有します。
コネクターやプラグなど摺動性のある部品に最適です。
銀‐グラファイトめっきの特徴
銀という金属は電気伝導性、熱伝導性が高いことで知られています。
その特徴を活かし、電子部品、特に接点用部品にめっきされ、使用されています。例えばコネクターやブスバーなどです。

しかし銀は展延性がある、つまり柔らかい金属なので繰り返し挿抜したり摺動したりすると摩耗してしまいます。
最終的には銀が摩耗しきってしまい、素材が露出してしまうことで電気抵抗が高くなったり、素材が腐食してしまう可能性があります。

銀‐グラファイトめっきは銀めっき中にグラファイト(炭素の結晶)を共析させることで、耐摩耗性を向上させためっきです。
純銀めっきよりもはるかに高い耐摩耗性を持ち、また電気伝導性も落ちることはありません。
耐摩耗性に優れる理由
なぜ銀‐グラファイトめっきが高い耐摩耗性を持つのか、その仕組みをご説明致します。

グラファイトとは、鉛筆の芯として使用される黒鉛です。
耐熱性、自己潤滑性、導電性、熱伝導性、耐酸性、耐アルカリ性に優れているという特徴があります。
この「自己潤滑性」「導電性」というのが重要です。

銀‐グラファイトめっきに含まれるグラファイトは、鱗形状のパウダーでサイズは3~10μm程度です。
グラファイトが含まれるため、外観は光沢のない灰色となります。
断面をみると、銀の被膜中にグラファイトが入り込んでいることがわかります。

銀‐グラファイトめっきの被膜が擦れると、下図のようになります。
被膜が摩擦されるごとに共析したグラファイトが削れて小さな粒となります。
この粒が被膜の上に分布することで潤滑剤の役割を果たし、摩耗抵抗を軽減させます。
そのおかげで接触抵抗が小さく保たれ、銀の摩耗を防ぐことができるのです。
またグラファイト自体に導電性があることから、電気は問題なく流れます。
摩擦摩耗試験による摺動性の評価
摩擦摩耗試験を行い、銀‐グラファイトめっきがどれだけ摩耗に強いのか、無光沢の純銀めっきと比較しました。
この試験は、銅板上の銀‐グラファイトめっきまたは無光沢銀めっき被膜に、銀めっきをつけた銅ボールを
一定の荷重を付与したうえで摺動させ、素材である銅が露出するまで、つまり銅板上の銀めっきが摩耗しきるまでの
サイクル数を計測する試験です。

銅が露出するまでのサイクル数が多ければ多いほど、摩耗しにくいということです。


試験条件は以下です。

装置   :荷重変動型摩擦摩耗試験 HHS2000 新東科学㈱
移動距離 :10㎜往復 (装置推奨移動距離値で実施)  
移動速度 :10㎜/秒  (装置推奨移動速度値で実施) 
試験荷重 :1N、5N、10N(3種類で評価)
試験材料 :Cuハルセル板、各種Agめっき膜厚:30μm狙い
相手材料 :Cu(C1100)Φ10ボール、Agめっき30μm狙い

結果は、無光沢銀めっきは荷重1Nのとき、10,000サイクル、5Nのとき、5,000サイクル、10Nのとき、1,000サイクルでした。
一方銀‐グラファイト(含有率1%)めっきは荷重1Nのとき、30,000サイクル、5Nのとき、25,000サイクル、10Nのとき、21,000サイクルでした。
銀‐グラファイト(含有率2%)めっきは荷重1Nのとき、40,000サイクル、5Nのとき、38,000サイクル、10Nのとき、30,000サイクルでした。
無光沢銀めっきより、銀‐グラファイトめっきの方がはるかに摩耗しにくいことがわかります。
またグラファイトの含有量が多いと、より摩耗しにくいことがわかりました。
接触抵抗測定
銀‐グラファイトめっきと無光沢銀めっきの接触抵抗の値を測定し、比較しました。
接触抵抗は、銀めっきをつけた板にピンを一定の荷重を付与した状態で接触させ、電気を流します。
その時の電気抵抗の値を計測します。

電気抵抗が高ければ電気が流れにくく、低ければ電気が流れやすいと言えます。

測定条件は以下です。

装置     :接触抵抗評価装置MS7500 ファクトケイ㈱
試験モード  :一点押込  
測定荷重   :1N、2.5N、5N、7.5N、10N
試験材料   :Cuハルセル板、各種Agめっき膜厚:30μm狙い
コンタクトピン:φ1mm/Φ2mm 金めっき、BeCu母材


結果は、1Nでは無光沢銀めっきと比べ銀‐グラファイトめっきの方が接触抵抗値がわずかに高い値でした。
2.5N以降は無光沢銀めっきよりも銀‐グラファイトめっきの接触抵抗値が低くなりました。
これは、荷重が軽いとコンタクトピンにグラファイトが直接当たって抵抗が高くなり、
荷重が重いとコンタクトピンがグラファイトを砕いて直接銀に接触する為、抵抗が低くなるのだと考えられます。

このことから、グラファイトが含まれていても電気伝導性に問題はないということがわかります。
まとめ
銀‐グラファイトめっきについてご紹介しました。

銀‐グラファイトめっきは無光沢銀めっきと比較してはるかに高い耐摩耗性を持っており、
また電気伝導性も通常の銀めっきと同程度であるということがわかりました。

このような特性から、コネクターやプラグなど、摺動性が必要な部品や挿抜する部品に最適であると言えます。
銀が摩耗しにくいことから、部品の長寿命化につながると考えられます。


銀‐グラファイトめっきつきましては、少量試作を承っております。
ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。
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